第1次大戦後の混乱の時代には多くの人道的貢献もなす一方で、「遺伝的劣等性」「生きるに値しない生命」等の観念も生じさせ、ナチス時代には遂に、障害者・ユダヤ人の大量殺戮や人体実験などのおぞましき所業に手を染めてしまったドイツの医師たち。しかし戦後、ドイツ医学界の自己反省までには驚くほど時間がかかった。それは実に44年後(1989年)、全国医師会議の際の国際シンポジウムと展示会においてであった。本書はその展示会の折に刊行された書物(カタログ)の中心的部分を訳したもの。写真約130点を収録。
『わたしたちは、いま率直に歴史を振り返ってみると、医師の倫理が内部から破壊されていたことを認めざるをえない。わたしたちに今日残されているのは、不気味な平常性、日常性の中で行われたものを痛みをもっていま思い起こすことであり、悲惨がまた新たに生じるかもしれないことを示唆している、この多くの歴史的事実を絶えず現在化することであろう。』(編者序言より)。
Ch・プロス/G・アリ 編 林功三 訳
A5判/144頁/本体2,136円
1993.1刊行 ISBN:4-938662-12-4【品切れ】